第1章-3:古墳時代と大和政権の成立
【はじめに】古墳時代とは何か
古墳時代は、3世紀後半からおよそ7世紀初頭(飛鳥時代の手前)まで続いた時代です。その名のとおり、「古墳(巨大な墓)」が各地に造られるようになったことが特徴で、当時の支配者層の権力や宗教観、地域間の政治的ネットワークがうかがえる重要な時代です。
この時代、日本列島の各地にあった「クニ」の中から、大和(現在の奈良県)を中心とする政権が他を従えていき、後の天皇制国家の原型である「大和政権」が成立します。
【1】古墳の意味と種類
🔸 古墳とは
- 支配者層の墓で、墳丘(盛り土)を伴う大規模なもの
- 墳丘の形や規模から、被葬者の地位や権力が推測される
- 副葬品(武器・装飾品・鏡など)から技術・外交関係もわかる
🔸 古墳の形の種類
- 前方後円墳(最も代表的)
- 円墳、方墳、前方後方墳 など多様な形式が存在
🔸 有名な古墳
- 大仙古墳(大阪府堺市):全長486m、世界最大級の前方後円墳。伝・仁徳天皇陵。
- 箸墓古墳(奈良県):最古級の大型前方後円墳。卑弥呼の墓とも推定される。
【2】古墳時代の社会と文化
🔸 支配と階層化
- 有力な豪族が各地に勢力を張り、地域の支配者となる
- 豪族の間で政治的な同盟や婚姻関係が結ばれ、中央政権との連携が進む
- 古墳に副葬された品々(鉄製の武器・装身具・馬具など)から、軍事力・財力・外交力を持っていたことがうかがえる
🔸 大和政権とヤマト王権
- 近畿地方の有力な豪族が中心となって形成した政治連合
- 全国の豪族を統合し、祭祀と軍事を通じて支配を広げた
- 後の「天皇家」の起源ともいえる政治体制
【3】外交と国際関係
🔸 倭の五王と中国との関係
『宋書』倭国伝には、5世紀に中国の南朝に朝貢した**倭の五王(讃・珍・済・興・武)**の記録がある。
- 日本の王が、中国王朝に朝貢し、官職を授けられて権威を得ようとした
- 倭の「武」は、雄略天皇に比定されることが多い
- 当時、中国との関係は「冊封体制」にあり、王権の正統性を外部に認めさせることが重要だった
🔸 朝鮮半島との関係
- 百済・新羅・高句麗などと交流・戦争を繰り返す
- 百済からは仏教・漢字・土木技術・儒教など多くの文化が伝来
- 「任那(みまな)」という日本の拠点が朝鮮半島南部にあったという記録もあり
【4】文化・技術・信仰の展開
🔸 渡来人の活躍
- 百済や高句麗などから渡ってきた技術者・学者・工人など
- 鉄器の製造、土木技術、漢字・儒教の知識などを伝え、古墳時代の社会の高度化に貢献
🔸 土師器と須恵器
- 土師器:縄文・弥生土器の系譜を引く素焼きの土器
- 須恵器:渡来人が伝えた高温焼成の硬質土器(生活用品の多様化)
🔸 宗教と祭祀
- 自然崇拝(山・川・太陽など)や祖先崇拝
- 巨大古墳そのものが「聖なる空間」であり、死者の霊を鎮める祭祀が重要視された
- 後の神道信仰の原型ともいえる宗教観がすでに形成されていた
【5】歴史学・考古学的な論点と最新研究
🔸 古墳の築造と支配の拡大
- 前方後円墳は近畿中心に広がり、地方豪族が中央への従属を示す象徴とも言える
- 築造技術の地域差や、副葬品の種類・数から、支配関係や交流圏が分析可能
🔸 天皇制の起源
- 古墳時代におけるヤマト王権の祭政一致体制が、後の「天皇」制度の母体となった
- 「神話」や「系譜」の形成(記紀編纂へとつながる)もこの時期に始まる
🔸 古墳の保存と発掘をめぐる議論
- 多くの古墳が宮内庁管理となっており、発掘調査が制限されている(とくに大仙古墳)
- 天皇陵の学術的研究の必要性と、皇室制度の尊重との間でバランスを取る課題がある
【6】まとめ:古墳時代の意義とは
観点 |
内容 |
政治 |
ヤマト王権が全国の豪族を統合(中央集権化の萌芽) |
社会 |
豪族による支配と階層社会の成立 |
文化 |
古墳文化、渡来人文化、祭祀の発達 |
対外関係 |
中国(南朝)・朝鮮(三国)との外交・技術交流 |
古墳時代は、日本列島における「国家」の萌芽が現れる時代です。支配者層の意識が宗教的・政治的に形成され、「日本国家」の原型がゆっくりと姿を現し始めた時代といえるでしょう。
国立個別指導塾の場所
個別指導塾
【監修者】 |
宮川涼 |
プロフィール |
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。 |
TOPに戻る 個別指導塾のススメ 小学生コース 中学生コース 高校生コース 浪人生コース 大学院入試コース 社会人コース(TOEIC対策) 英検準1級はコストパフォーマンスが高い 英文法特講(英語から繋げる本物の教養) 東大合格は難しくない 英語を学ぶということ 英文法講座 英検があれば200~20倍楽に早慶・GMRCHに合格できる 現代文には解き方がある 共通テストや国立の記述テストで満点を取る日本史 共通テストで満点を取るための世界史 サードステーションの必要性 学年別指導コース 文部科学省
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。