第3章-4:昭和初期の社会と戦争への道


【はじめに】民主主義の挫折と軍国主義の台頭

大正デモクラシーで一時的に盛り上がった自由と民主の気運は、昭和初期になると急速に後退していきます。世界恐慌に端を発した経済的混乱と、それに呼応する国内政治の混迷、そして軍部の発言力増大によって、日本は次第に全体主義と対外侵略の道を歩み始めます。この章では、昭和初期の社会状況と戦争への道のりを解説します。


【1】世界恐慌と昭和恐慌

🔸 世界恐慌(1929年)

  • アメリカ発の株価暴落が世界経済に波及
  • 貿易縮小とデフレが日本経済にも深刻な打撃

🔸 昭和恐慌(1930年〜)

  • 浜口雄幸内閣による金解禁政策 → 輸出不振・物価下落
  • 農村では冷害と相まって娘の身売りが横行
  • 都市でも失業と倒産が増加

【2】軍部の台頭と政党政治の終焉

🔸 五・一五事件(1932年)

  • 海軍青年将校らが犬養毅首相を暗殺
  • 政党内閣が事実上終焉し、軍部が主導する政治へ

🔸 二・二六事件(1936年)

  • 陸軍青年将校によるクーデター未遂事件
  • 多数の政府高官を殺害 → 軍部の粛清と権力集中

🔸 軍部大臣現役武官制の復活

  • 内閣に軍人を必須とする制度が復活 → 軍の意向が内閣人事を左右

【3】満州事変と日中戦争

🔸 満州事変(1931年)

  • 柳条湖事件をきっかけに関東軍が満州全域を占領
  • 日本政府は事後承認、国際社会は強く非難

🔸 国際連盟脱退(1933年)

  • リットン調査団報告 → 満州国を否定
  • 日本は抗議し、ジュネーブ総会から脱退

🔸 日中戦争(1937年〜)

  • 盧溝橋事件を発端に全面戦争に突入
  • 南京事件などの戦争犯罪が発生
  • 戦線が拡大し、泥沼化する中で国民動員体制が強化

【4】国内体制の変化と国民生活

🔸 国家総動員法(1938年)

  • 政府が労働力・物資・経済を統制できる非常措置法
  • 戦争遂行のための全体主義的体制へ

🔸 大政翼賛会(1940年)

  • 政党を解散し、国民統合の名のもとに結成
  • 反対意見を封殺し、メディアや教育も国策に従属

🔸 国民生活の統制

  • 物資配給制・贅沢禁止令・隣組制度などが導入
  • 戦時色が日常生活の隅々にまで及ぶ

【5】まとめ:昭和初期の変質と戦争国家への移行

観点 内容
経済 世界恐慌・昭和恐慌による混乱と軍需依存経済への転換
政治 政党政治の崩壊と軍部独裁体制の成立
社会 国家総動員体制と自由の抑圧
国際関係 満州事変・国際連盟脱退・日中全面戦争への突入

昭和初期は、自由や民主主義の基盤が崩れ、国家の全体主義化と戦争体制への移行が急速に進んだ時代でした。次章では、この流れがやがて第二次世界大戦(太平洋戦争)へとつながっていく過程をさらに詳しく解説していきます。

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【監修者】 宮川涼
プロフィール 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。
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