第2章-11:室町時代の社会と文化
【はじめに】武士と民衆の時代へ
室町時代は、鎌倉幕府のような中央集権的な支配体制ではなく、地方の守護大名や国人(地方武士)の自立性が高まり、地域ごとの特色が強まった時代です。また、農村社会や都市の発展、市民文化の誕生など、日本社会全体に新たな階層と活力が生まれました。 この章では、室町時代の社会構造・経済活動・文化的展開を体系的に解説します。
【1】守護大名と国人の台頭
🔸 守護大名の成長
- 幕府から任命された守護が、やがて一国を実質支配する「守護大名」に発展
- 土地や農民を支配し、自らの軍事力を背景に独立傾向を強める
🔸 国人と一揆
- 地方に根を下ろす土豪・地侍たちが「国人」として自立
- 国人たちは「国人一揆」として連携し、守護と対立する場面も
【2】農業と村の自立化
🔸 農業技術の向上
- 二毛作の普及、水車の利用、農具の改良
- 商品作物(茶・漆・綿など)の栽培も拡大
🔸 惣村(そうそん)の形成
- 村落共同体が自律的に運営されるようになる
- 寄合(村の会議)で決定、村掟(きまり)を作成
- 守護や地頭から村を守るための「惣の一揆」も出現
【3】商業と都市の発展
🔸 市・座・問屋制度
- 市場(定期市)の発展。寺社の門前町が商業中心地に
- 座:特権的な同業組合(例:酒屋座、塩座)
- 問屋:流通業者。中継ぎ・卸売りを担う
🔸 貨幣経済の浸透
- 宋銭・明銭の大量流通
- 米・絹などとの交換取引も活発
【4】民衆の文化と生活
🔸 庶民の娯楽と芸能
- 猿楽から発展した能楽(観阿弥・世阿弥)
- 狂言:風刺や日常を題材にした演劇
- 連歌・小歌:庶民による詩の交流
🔸 宗教と信仰
- 地方では地蔵信仰・念仏講などの民間信仰が盛んに
- 一向宗(浄土真宗)による門徒集団の武装化(後の一向一揆)
【5】室町文化の展開
🔸 北山文化(義満の時代)
- 金閣寺(舎利殿)の建立
- 能楽・水墨画・唐物の収集(中国趣味)
🔸 東山文化(義政の時代)
- 銀閣寺(東求堂)の造営
- 書院造:和風建築の原型(畳・障子・床の間)
- 茶の湯の発展(村田珠光)
- 水墨画(雪舟)・花道・香道などの発展
【6】応仁の乱と戦国時代の前夜
🔸 応仁の乱(1467〜1477年)
- 将軍家の後継争いと、守護大名の対立が原因
- 京都は荒廃、幕府権威が大きく低下
🔸 戦国大名の台頭
- 守護に代わって、実力で支配を広げる戦国大名が出現
- 分国法(独自の法律)を制定し、支配体制を強化
【7】まとめ:室町時代の社会と文化の意義
観点 | 内容 |
---|---|
政治 | 守護大名・国人・一揆による多極支配 |
社会 | 惣村と農村自治、民衆の自立化 |
経済 | 市場経済・貨幣流通の拡大、都市の発展 |
文化 | 北山文化・東山文化、庶民文化の成熟 |
室町時代は、中央の政治権力が弱体化する一方で、地方や民衆が活力を増し、日本の社会が多様性と自律性を獲得していく過程でした。中世後期のこの時代は、戦国時代へと続く変革の序章といえるでしょう。
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【監修者】 | 宮川涼 |
プロフィール | 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。 |
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