第1章-8:武士の登場と鎌倉幕府の成立


【はじめに】武士の時代の始まり

平安時代後期から鎌倉時代初期にかけて、日本の支配構造は大きく変化します。これまで政治の中心だった貴族に代わって、武士が実質的な支配権を握り始めるのです。そのきっかけとなったのが、平氏政権の興亡、そして源頼朝による鎌倉幕府の創設です。 この章では、武士がどのようにして登場し、どのような背景で幕府を開いたのかを、中世日本の社会変動と結びつけて詳細に解説します。

【1】武士の登場と台頭の背景

🔸 荘園制と地方の治安

  • 10世紀以降、口分田制が崩壊し、私有地(荘園)が増加
  • 荘園領主が自衛のために武装勢力を雇用 → 武士の出現
  • 国司(地方官)も実力行使が必要となり、武士団が各地に形成

🔸 武士団の発展

  • 地方の武士たちは血縁や地縁で結びつき、主従関係を形成
  • 有力な武士が棟梁となり、勢力を広げていく

🔸 桓武平氏と清和源氏

  • 朝廷の皇族を祖とする名門武士の系譜
  • 平将門の乱(939年)、藤原純友の乱などを経て、武士の軍事力が全国に認識される

【2】平氏政権と武士の中央進出

🔸 保元の乱(1156年)・平治の乱(1159年)

  • 貴族と武士の複雑な政争。武士の中央政界への進出が本格化
  • 保元の乱では源義朝・平清盛が台頭
  • 平治の乱で清盛が勝利し、源義朝は敗死(子の頼朝は伊豆へ流される)

🔸 平清盛の政治

  • 太政大臣にまで上り詰め、貴族社会の頂点に立つ
  • 日宋貿易を奨励し、経済力も確保
  • 天皇の外戚として、政治を専断(安徳天皇の即位)
  • 朝廷を無視する専横に批判が集まる

【3】源平合戦と鎌倉幕府の成立

🔸 以仁王の令旨と全国の源氏蜂起(1180年)

  • 後白河法皇の息子・以仁王が平氏打倒を呼びかける
  • 源頼朝、木曾義仲、源義経らが各地で挙兵

🔸 源頼朝の東国支配

  • 鎌倉を本拠とし、東国武士団を束ねる
  • 地頭・守護の設置(1185年)により、全国統治を開始

🔸 壇ノ浦の戦い(1185年)

  • 平家一門が滅亡。安徳天皇入水。
  • 天皇家の一系は持明院統へ移行

🔸 鎌倉幕府の成立(1192年)

  • 征夷大将軍に任命された源頼朝が、武家政権を確立
  • 鎌倉を拠点とし、京都の朝廷と並ぶ二重政権体制へ

【4】鎌倉幕府の仕組みと武士の統治

🔸 幕府の三職制

  • 将軍:源頼朝が頂点に立つ
  • 侍所:軍事・警察(和田義盛)
  • 政所:政務・財務(大江広元)
  • 問注所:訴訟・裁判(三善康信)

🔸 封建制度の形成

  • 将軍と御家人(家臣)が御恩と奉公で結ばれる
    • 御恩:土地の支配権(本領安堵、新恩給与)
    • 奉公:戦争や政務での忠誠・軍役の提供

🔸 地頭と守護

  • 地頭:荘園・公領の管理・年貢の徴収
  • 守護:各国の治安維持と軍事指揮
  • 地方の支配が「武家による現地実力支配」へと変化

【5】歴史学的観点と応用論点

🔸 武士の倫理と政治思想

  • 「名誉」「忠誠」「義」などの武士道的価値観の芽生え
  • 頼朝は公家的な儀礼と武士的現実主義の両立を試みた

🔸 中央と地方の二重構造

  • 鎌倉と京都(朝廷)の並立体制
  • 朝廷の文化権威、幕府の軍事権力という二元的国家構造

🔸 武士政権の始まりの意味

  • 以後700年以上にわたり、実質的な政権は武士が握る体制へ
  • 民主主義以前の「権威と実力の分離」の始まり

【6】まとめ:武士と幕府の成立の意義

観点 内容
社会構造 武士団の登場と主従関係の確立
政治 源頼朝による幕府の創設と武家政権の確立
統治制度 地頭・守護の設置による地方支配の強化
文化 武士道的倫理の原型と新たな政治思想の台頭
鎌倉幕府の成立は、単なる政権交代ではなく、社会の構造や価値観、支配の形式を根本から変える大きな転換でした。ここから中世日本の幕が本格的に開くのです。

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【監修者】 宮川涼
プロフィール 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。
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ryomiyagawa Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。
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