第1章-7:平安時代の貴族社会と国風文化
【はじめに】日本的な文化の確立
平安時代(794〜1185年)は、日本の歴史の中でも最も長く続いた時代の一つであり、政治的には貴族階級が実権を握る「摂関政治」の時代であり、文化的には日本独自の美意識が確立された「国風文化」の時代でもあります。 桓武天皇による平安京遷都から始まり、藤原氏による摂関体制、仏教の変容、文学・美術の開花まで、多くの変化と発展があったこの時代を多角的に読み解いていきます。
【1】平安京の建設と政治体制の変化
🔸 平安京遷都(794年)
- 桓武天皇が奈良仏教勢力(南都六宗)からの政治的独立を目指し、長岡京を経て平安京へ遷都
- 中国の長安を模した都城制:碁盤の目状の都市構造
🔸 律令体制の揺らぎと公地公民制の崩壊
- 口分田制度の限界、荘園の発展により、国家による土地支配が形骸化
- 地方政治の実権は国司や豪族に
【2】摂関政治と藤原氏の隆盛
🔸 藤原氏の台頭
- 藤原不比等の子孫が外戚(天皇の母方親族)として権力を握る
- 摂政(幼少天皇の補佐)・関白(成人天皇の補佐)に任命される体制
🔸 摂関政治の全盛期
- 藤原道長(関白):「この世をば我が世とぞ思ふ…」
- 藤原頼通(道長の子):平等院鳳凰堂の建立
【3】国風文化の形成と特徴
🔸 国風文化とは
- 中国文化の摂取から脱し、日本独自の文化が成熟
- 貴族社会を中心に展開された、洗練された宮廷文化
🔸 文字と文学
- 仮名文字の発明(万葉仮名→ひらがな・カタカナ)
- 『竹取物語』:日本最古の物語文学
- 『伊勢物語』:在原業平とされる歌物語
- 『枕草子』(清少納言):随筆文学の祖
- 『源氏物語』(紫式部):世界最古の長編小説
🔸 美術と建築
- 寝殿造:貴族邸宅の建築様式
- 大和絵:日本的な風景や物語を描く絵画(源氏物語絵巻など)
🔸 服飾と儀礼
- 十二単、直衣、狩衣など、階級や場面に応じた装束
- 年中行事:五節句・元日・七夕など宮廷行事が制度化
【4】仏教の展開と浄土信仰の広がり
🔸 密教の受容
- 最澄:天台宗を比叡山延暦寺に開く
- 空海:真言宗を高野山金剛峯寺に開く
- 両宗ともに密教(秘密の修行)を特徴とし、国家安泰・加持祈祷を行う
🔸 浄土教の広まり
- 阿弥陀仏への信仰によって極楽往生を願う
- 『往生要集』(源信):死後の世界観・地獄図などを提示
- 貴族を中心に「末法思想」が広まり、浄土信仰が支配的に
【5】歴史的意義と矛盾
🔸 中央集権と地方分権のせめぎあい
- 摂関家による中央政治の独占と、地方での国司・荘園領主の独立性の増大
- これが後の「武士の登場」への下地となる
🔸 貴族社会の繁栄と閉鎖性
- 華やかな文化の裏で、庶民・地方の生活は貧困に
- 社会の格差が拡大し、地方における治安不安が増加
【6】まとめ:平安時代の本質とは
観点 | 内容 |
---|---|
政治 | 摂関政治による貴族支配、天皇の権威維持 |
文化 | 仮名・物語・絵巻物に代表される国風文化 |
宗教 | 密教・浄土信仰など日本仏教の深化 |
社会 | 荘園制と武士階層の芽生え |
平安時代は、貴族文化の絶頂と制度のほころびが同時に進行した時代でした。政治的には藤原氏の専制とその限界、文化的には世界に誇る日本的美意識の誕生が見られ、現代の日本文化の原点といえる時代でもあります。
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【監修者】 | 宮川涼 |
プロフィール | 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。 |
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