第1章-1:旧石器時代と縄文時代のくらし
【はじめに】人類史と日本史の出発点
日本の歴史を学ぶうえで最初に出会うのが「旧石器時代」と「縄文時代」です。これらの時代は、日本列島に人類がどのように住みつき、どんな生活を送っていたのかを理解するうえで極めて重要です。ここでは中学校の教科書に準拠しつつ、高校・大学で扱われる考古学・人類学の観点も交えて、旧石器時代と縄文時代の特徴と違いを初心者にもわかりやすく解説していきます。
【1】旧石器時代:狩猟民の時代
🔸 旧石器時代とは
旧石器時代は、日本列島に最初の人類が現れたとされる時代で、およそ3万8千年前〜1万3千年前まで続いたとされます(※発掘により年代は更新されつつある)。この時代は氷期にあたり、現在より気温が低く、マンモスやナウマンゾウなどの大型動物が生息していました。
🔸 遺跡と発見
- 岩宿遺跡(群馬県):1946年、相沢忠洋によって発見され、日本に旧石器時代が存在したことを初めて証明しました。
- 野尻湖遺跡(長野県):ナウマンゾウやオオツノジカの骨とともに石器が発見され、狩猟の痕跡がわかる貴重な遺跡です。
🔸 道具と生活
- 石器は「打製石器」(石を打ち砕いて鋭利に加工)
- 火を使用し、動物の肉や木の実を調理
- 住居はなく、移動生活(狩猟採集型の生活)
- 共同体は小規模で、10〜20人の集団行動が基本
🔸 応用論点(考古学・人類学)
- 日本の旧石器文化は、ユーラシア大陸と陸続きだった時期の渡来による可能性があり、ホモ・サピエンスがアフリカを出た後、東アジアに展開した経路の一環とされる。
- 「港川人」(沖縄県)や「山下町洞人」など、日本の旧石器時代人の骨が一部出土しているが、いまだに大陸系か在来系か議論が続いている。
【2】縄文時代:定住と文化の始まり
🔸 縄文時代とは
縄文時代は、1万3千年前から紀元前4世紀ごろまで続いたとされる時代で、
縄目の文様がついた土器が使われていたことからこの名称があります。この時代、人々は狩猟・採集・漁労に加えて、ある程度の定住生活を行うようになります。
🔸 遺跡と発見
- 三内丸山遺跡(青森県):大型の竪穴住居や高床倉庫、交易を示す黒曜石などが発見され、広範な交流と高度な生活が示されています。
- 大森貝塚(東京都):モースによる発見。貝塚から当時の食生活や埋葬の習慣が明らかに。
🔸 生活と文化
- 狩猟(シカ・イノシシ)、採集(ドングリ・クルミ)、漁労(釣り・網)
- 竪穴住居に定住し、集落を形成
- 土器(煮炊き用・保存用・祭祀用など)
- 土偶(女性をかたどった像)や石棒(男性器の象徴)など、豊穣や子孫繁栄の信仰がみられる
🔸 縄文土器の特徴と進化
- 草創期→早期→前期→中期→後期→晩期と変遷
- 特に中期の**火焔型土器(新潟・信濃川流域)**は装飾性が高く、日本独自の芸術文化とされる
🔸 社会構造と信仰
- 貝塚や墓により、埋葬の習慣(死者を大切にする)
- 土偶などにみられるアニミズム的信仰(自然や動物に霊性を見出す)
- 集団内における指導者(シャーマン的存在)や祭祀の役割の存在が推測される
🔸 応用論点(歴史学・人類学・ジェンダー史)
- 縄文社会には明確な階級がなく、平等的な社会構造とされる
- 土偶の存在から、女性の役割や出産・豊穣信仰が重視された母系的社会という見方もある(※ジェンダー史的視点)
- 狩猟・採集生活が定住と共に高度化した点は、世界史的にも珍しく「農耕を経ずに高度な文化を持った例」として注目されている
【3】旧石器と縄文の比較まとめ
項目 |
旧石器時代 |
縄文時代 |
時期 |
約3.8万〜1.3万年前 |
約1.3万年前〜紀元前4世紀 |
主な道具 |
打製石器 |
磨製石器・縄文土器 |
食生活 |
狩猟・採集 |
狩猟・採集・漁労 |
住居 |
移動生活(仮住まい) |
定住・竪穴住居 |
宗教観 |
不明 |
土偶・石棒・祭祀の痕跡あり |
社会構造 |
小規模な集団 |
集落・分業的生活 |
【4】今後につながる歴史的意義
- 縄文時代の終わりに近づくにつれ、大陸から新たな文化(稲作・金属器)が伝来し、日本の社会は大きく変化していきます。
- 縄文文化は孤立ではなく、環日本海・東北アジアとの交流圏の一部であったと近年の研究で分かってきました。
- また、現代日本人の遺伝子には縄文人のDNAが約10〜15%残っているという研究もあり、私たちの身体にも縄文の記憶が息づいているのです。
【はじめに】人類史と日本史の出発点
日本の歴史を学ぶうえで最初に出会うのが「旧石器時代」と「縄文時代」です。これらの時代は、日本列島に人類がどのように住みつき、どんな生活を送っていたのかを理解するうえで極めて重要です。ここでは中学校の教科書に準拠しつつ、高校・大学で扱われる考古学・人類学の観点も交えて、旧石器時代と縄文時代の特徴と違いを初心者にもわかりやすく解説していきます。
【1】旧石器時代:狩猟民の時代
🔸 旧石器時代とは
旧石器時代は、日本列島に最初の人類が現れたとされる時代で、およそ3万8千年前〜1万3千年前まで続いたとされます(※発掘により年代は更新されつつある)。この時代は氷期にあたり、現在より気温が低く、マンモスやナウマンゾウなどの大型動物が生息していました。
🔸 遺跡と発見
- 岩宿遺跡(群馬県):1946年、相沢忠洋によって発見され、日本に旧石器時代が存在したことを初めて証明しました。
- 野尻湖遺跡(長野県):ナウマンゾウやオオツノジカの骨とともに石器が発見され、狩猟の痕跡がわかる貴重な遺跡です。
🔸 道具と生活
- 石器は「打製石器」(石を打ち砕いて鋭利に加工)
- 火を使用し、動物の肉や木の実を調理
- 住居はなく、移動生活(狩猟採集型の生活)
- 共同体は小規模で、10〜20人の集団行動が基本
🔸 応用論点(考古学・人類学)
- 日本の旧石器文化は、ユーラシア大陸と陸続きだった時期の渡来による可能性があり、ホモ・サピエンスがアフリカを出た後、東アジアに展開した経路の一環とされる。
- 「港川人」(沖縄県)や「山下町洞人」など、日本の旧石器時代人の骨が一部出土しているが、いまだに大陸系か在来系か議論が続いている。
【2】縄文時代:定住と文化の始まり
🔸 縄文時代とは
縄文時代は、1万3千年前から紀元前4世紀ごろまで続いたとされる時代で、
縄目の文様がついた土器が使われていたことからこの名称があります。この時代、人々は狩猟・採集・漁労に加えて、ある程度の定住生活を行うようになります。
🔸 遺跡と発見
- 三内丸山遺跡(青森県):大型の竪穴住居や高床倉庫、交易を示す黒曜石などが発見され、広範な交流と高度な生活が示されています。
- 大森貝塚(東京都):モースによる発見。貝塚から当時の食生活や埋葬の習慣が明らかに。
🔸 生活と文化
- 狩猟(シカ・イノシシ)、採集(ドングリ・クルミ)、漁労(釣り・網)
- 竪穴住居に定住し、集落を形成
- 土器(煮炊き用・保存用・祭祀用など)
- 土偶(女性をかたどった像)や石棒(男性器の象徴)など、豊穣や子孫繁栄の信仰がみられる
🔸 縄文土器の特徴と進化
- 草創期→早期→前期→中期→後期→晩期と変遷
- 特に中期の**火焔型土器(新潟・信濃川流域)**は装飾性が高く、日本独自の芸術文化とされる
🔸 社会構造と信仰
- 貝塚や墓により、埋葬の習慣(死者を大切にする)
- 土偶などにみられるアニミズム的信仰(自然や動物に霊性を見出す)
- 集団内における指導者(シャーマン的存在)や祭祀の役割の存在が推測される
🔸 応用論点(歴史学・人類学・ジェンダー史)
- 縄文社会には明確な階級がなく、平等的な社会構造とされる
- 土偶の存在から、女性の役割や出産・豊穣信仰が重視された母系的社会という見方もある(※ジェンダー史的視点)
- 狩猟・採集生活が定住と共に高度化した点は、世界史的にも珍しく「農耕を経ずに高度な文化を持った例」として注目されている
【3】旧石器と縄文の比較まとめ
項目 |
旧石器時代 |
縄文時代 |
時期 |
約3.8万〜1.3万年前 |
約1.3万年前〜紀元前4世紀 |
主な道具 |
打製石器 |
磨製石器・縄文土器 |
食生活 |
狩猟・採集 |
狩猟・採集・漁労 |
住居 |
移動生活(仮住まい) |
定住・竪穴住居 |
宗教観 |
不明 |
土偶・石棒・祭祀の痕跡あり |
社会構造 |
小規模な集団 |
集落・分業的生活 |
【4】今後につながる歴史的意義
- 縄文時代の終わりに近づくにつれ、大陸から新たな文化(稲作・金属器)が伝来し、日本の社会は大きく変化していきます。
- 縄文文化は孤立ではなく、環日本海・東北アジアとの交流圏の一部であったと近年の研究で分かってきました。
- また、現代日本人の遺伝子には縄文人のDNAが約10〜15%残っているという研究もあり、私たちの身体にも縄文の記憶が息づいているのです。
国立個別指導塾の場所
個別指導塾
【監修者】 |
宮川涼 |
プロフィール |
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。 |
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早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。