人生の意味と死生観 ─ 有限性の自覚と生きる意志


【1】「なぜ生きるのか?」という根源的問い

青年期は、自我のめざめと共に、「生きる意味とは何か」「死とは何か」といった根源的な問いに直面する時期でもあります。進路、将来、社会との関係に悩むなかで、「そもそも人生とは何か」「何のために生きるのか」といった実存的な問いが立ち上がります。
「人生に意味があるのではない。人生に意味を与えるのは私たちである。」(現代哲学的視点)
この問いへの応答は、宗教、哲学、心理学など多様な視座から探求されてきました。

【2】死の意識が生を照らす

死は避けられない事実でありながら、日常生活ではしばしば遠ざけられる主題です。しかし、哲学者たちは「死こそが生を意味づける」と捉えてきました。

🔸 ハイデガーの「死への存在」

  • 『存在と時間』でハイデガーは、人間を「死にゆく存在(Sein-zum-Tode)」と呼びます。
  • 死を「抽象的な終わり」ではなく、常に先立って自分の存在に影を落とす現実的な可能性として捉えることで、人生の選択に責任と真剣さが生まれる。
「死に至る自己の存在を自覚することで、私は初めて本当に“私”として生き始める」

【3】宗教における死と生の意味づけ

宗教は古来より「死」を超えた意味を与える枠組みを提供してきました。
宗教 生の意味 死の意味
仏教 煩悩と無常を乗り越え、悟りへ向かう修行 輪廻転生の一環、解脱への契機
キリスト教 神の愛に応えて生きること 永遠の命(復活)への移行
イスラーム アッラーの意志に従い善を行う 最後の審判後の天国・地獄への分かれ目
宗教は、死を単なる「終わり」ではなく、超越や永続の始まりとして捉える構えを人々に与えてきました。

【4】現代の死生観:個人主義と医療化の中で

現代社会では死が医療の中に閉じ込められ、日常から遠ざけられる傾向にあります。高齢化や延命治療の問題、尊厳死、安楽死の是非といった課題が浮上しています。
  • 個人主義の進展:死に方も「自分で選ぶ」べきだという価値観が広がる
  • 死の匿名化:病院や施設の中で「静かに処理される死」
  • 「生きているとはどういうことか」への問い直し:生命の質(QOL)、生きがい、スピリチュアルケア

【5】人生の意味をどう見出すか

🔸 フランクルの「意味への意志」

ホロコーストを生き延びた精神科医ヴィクトール・フランクルは、『夜と霧』『意味による癒し』などで、人間は「快楽への意志」でも「権力への意志」でもなく、**「意味への意志(will to meaning)」**に動かされると主張しました。
「人生の意味は状況によって与えられるのではなく、その状況にどう応答するかによって創られる」
  • 苦悩や絶望の中でも、人はなお意味を見出そうとする
  • 自己超越的な志向(家族、仕事、他者)に人生の価値を見出す

✅ まとめ:生の意味とは、選びとる責任である

  • 生きる意味は、誰かが与えてくれるものではない。
  • 死の存在を見据えることで、人生における一つひとつの選択が重みを帯びてくる。
  • 倫理とは、生きるに値する人生を自らの価値観と他者との関係の中で問い直す営みである。
青年期は、生と死のリアリティに出会い、それにどう意味を与えるかを探る、まさに実存的出発点の時期です。

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【監修者】 宮川涼
プロフィール 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。
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ryomiyagawa Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。
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